JJUG CCC 2018 Springで"海外登壇経験者パネルディスカッション"のパネリストをしました。他のみなさんは英語がとても堪能だったり何度も英語登壇をされていたりする中、15分の英語登壇をしただけの私がパネリストというのもとても恐縮でした。
ただ、私は日本の教育システムそのままで育った人間です。受験英語のみで、生まれてから海外の人と話したことはありませんでした。発音の練習などしたこともなく、カタカナ英語でした(今もかなりそう)。きっと同じように育った人も多いはずです。いろんな機会があった人を見て、不平等だよなあと私も思うことはありますが、個人としては今いるレベルから前に進んでいくしかありません。
私の学習法が最高とも正しいとも最短とも思いませんが、前述のCCCのセッションでどうしているか知りたいというリクエストもありましたので、学習履歴を書きます。
学習前スペック
- 日本の公立小中、県立高校、国立大学卒
- 留学経験なし
- 受験英語のみ、なので読むのはある程度できる
- 数年間洋書の技術書は年一冊読んでた(文章すべては理解していないが、大意はとれる)
- TOEIC 550
- 英語のメールさえ書いたことがない
- 3年前2015年まで海外の人と話したことはない
- リスニングとスピーキングは30代後半から学習開始
3年経ったあと
- 2017年DevoxxUSという海外カンファレンスで15分登壇
- 上記登壇前TOEICが試験対策ほぼなしで700になってた(今もっと上がってたらいいなあ)
- 年2,3回海外カンファレンスに参加(Java関連)、セッションやスピーカーによるが内容は理解できることが多い
- 日本で開かれる英語セッションなら同時通訳なしで聴ける
- JOnsenという海外の方とのアンカンファレンスでは、対話についていけないことも多い
- 食事での会話といったことは全然ダメ
- InfoQ.comで技術記事を翻訳
- 海外カンファレンスのセッションプロポーザルを出しまくる
これは勉強ではない。だからがんばらない。
"ソフトウェアエンジニアには英語が必要。だから勉強しなくては!"という立ち位置で英語を学ぶのはとてもつらいですし、多くの人にとって続けるのは難しいでしょう。私も"英語を勉強するモチベーションは?"と聞かれますが、モチベーションと言えるものはなさそうです。"英語ができるようになる方がエンジニア人生を楽しめるから、英語に触れる時間を多くしてる"という感じです。長時間がんばって勉強するといったことはしたことがありません。
モチベーションが上がるということは、下がることがあるということです。がんばってしまうと、疲れてできなくなり、続かないことも多いです。そうではなく、スキマ時間を活用したゆったりペースでつねに小さな学びを継続する方がよいと考えています。
最優先: カタカナ発音から少しでも脱却する
発音を改善するのはとても費用対効果が大きいと考えます(私の発音はきれいではないですし、通じないことも多いですが…)。単に発音がよくなって通じやすくなるというだけでなく、リスニングなど他の領域の学習効率を大幅に上げることができます。
練習方法は簡単で、発音の本を買って、その付録CDを聞きながら"実際に自分の口から声を出す"だけです。聴くだけではダメです。実際に声に出しましょう。日本語話者には動かせないところまで舌を動かす練習がいるのです。
発音の本の良し悪しは私にはそこまでわかりません。私は図書館で借りた本で練習しました。
- 作者: 松澤喜好
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2010/08/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 6人 クリック: 41回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
CD BOOK バンクーバー 発音の鬼が日本人のためにまとめた ネイティブ発音のコツ33 (アスカカルチャー)
- 作者: リチャード川口
- 出版社/メーカー: 明日香出版社
- 発売日: 2013/09/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
スキマ時間という観点では、私は家からオフィスまでの往復で歩いている間はひたすらイヤホンで聴いた発音を反復しました。
ソフトウェアエンジニアのカンファレンス参加に特化したリスニング
今、世界中のカンファレンスのセッション動画はYouTubeで公開されています!カンファレンス参加という観点でのリスニング強化にはこれが最適だと思います。
- 実際に参加する前の練習、リスニングスキルの力量把握になる
- 自分自身が興味のある分野の話なので、しっかり聴けて日々聴いても飽きない
- 専門知識の強化にもなり、一石二鳥
- YouTubeに自動字幕機能があり、どうしても聴き取れないときのヒントになる
JavaであればJavaOne、Devoxxなどがよいです。注意事項は、画質のよいものを選ぶこと!私の経験では、画質が悪くなるほど集中できず聴けなくなります。1080pはほしいです。
スキマ時間という観点では、みなさん仕事でのお昼休みはどうしていますか?1時間の休憩だとすると、用意しておいた食べ物をさっと食べるだけなら20分もかかりません。私は週の大半、残りの時間をセッション動画視聴に当てています。セッションはたいてい45分前後、ちょうど1日1セッション見れます。もちろん、たまに同僚とゆっくりご飯を食べるのもいいですよね!
海外旅行で使う短いやり取りの瞬発力を鍛える
登壇するわけではなければ、英語で話す内容は定型的なものです。私は英語で会話したことがなかったのでほんの簡単な内容でも詰まって話せないことが多く、よくあるシチュエーションのフレーズを覚えて今もよく使っています。
1つ1つ覚える必要があるため一気に進められません。私はNHKゴガクのラジオ番組を日々聴いています。ラジオ!?ラジオと言っても実際にラジオは聴いておらず、スマートフォンアプリでラジオ放送に関係なくいつでも聴けるのです。
実際のラジオ放送より1週間遅れで、1週間分の放送をすべていつでも聴けます。私は当初さまざま聴いていましたが、今は「英会話タイムトライアル」のみにしています。理由は「短いやり取りの瞬発力」という目的にマッチするのがこの番組だからというだけです。入門ビジネス英語など他にも良質な番組が多くあります!
たとえばI don't know
よりI'm not sure
、Sit down
よりHave a seat
の方が温かみがある、といった場面場面でさっと使える、シンプルだけど有効なフレーズが学べます。
スキマ時間という観点では、これも通勤が最適です。
英語技術文書を読んで英語の構文に慣れると、リスニングの理解力が上がる
目で技術文書を読んで内容を理解できるようになると、会話でも相手の英語の音さえ聞き取れればもう内容を理解できるということです。大人になってからの、第2言語としての英語学習(ESL)では文法や構文という角度から英会話を向上させるアプローチは必要と私個人は考えています。
英語の技術文書はそれこそ数多くあります。よく更新がある技術ニュースサイトは文章が短く日々更新されるので、よいと思います。InfoQは言語関わりなくIT全般に渡って、ニュースだけでなくボリュームのある技術解説や主催するQConカンファレンスのセッション動画もあります。
翻訳は英語学習になるか?
このブログを以前から読んでいる方はご存知かもしれませんが、私はInfoQ日本語版の記事翻訳をしています。
アマチュア翻訳であるのですが、これは英語学習のためにやっているのか、学習になっているのかというと、効果的な学習とはならないと答えます。私は翻訳時前から訳す、いわゆるスラッシュリーディングをしていますので、その部分は訓練になっているかもしれません。ただ、その後の"日本語に訳す"という部分は、英語学習によい影響はなく、時にはマイナスになるかもしれません。英語を使うとき、頭の中で日本語に訳してしまうのは悪手だからです。とくに会話時にはリスニング -> 日本語訳 -> 返答の日本語文 -> 英語訳をやろうものならテンポが非常に遅く会話になりません。セッションを聞く際にも日本語訳のスピードが追いつかず、内容が理解できません。
英語を聴き英語のまま脳が理解し、英語を話すということが絶対に必要だからです。記事翻訳は英語学習の観点ではなく別の観点、たとえばそこから技術知識を得たり日本のコミュニティへの貢献といった観点から捉えましょう。
私の脳は、英語をそのまま理解することもたまにあるように感じます。聴く場合はまだまだ数少ないですが、(技術文書を)読む場合はかなりの割合で理解しているように自分では思います(その内容日本語で説明しようとするとできないけれど、スラスラ読める感覚)。
Java Magazineとは
Javaであれば、Oracleが発行しているJava Magazineというものがあります。
「Javaプログラミング言語、JavaベースのアプリケーションをはじめとするJava技術全般の最新トピックス」です。日本語訳もありますが抜粋翻訳でして、英語版はかなりボリュームがあります。2ヶ月に1度という発行頻度もネイティブでない私たちにちょうどよい頻度です。
Java Magazineは非常によい解説記事が多く、私も長年読んでいます。JVM内部についての記事もほぼ毎号あります。
技術文書は小説と異なり型がしっかりしていて読みやすいです。型やパターンに慣れておけば、会話時もその部分は聞き流し本質のみ抜き取れます。
スキマ時間という観点では、通勤電車が最適です(私は関西なのでできますが、関東の方は無理でしょうか…?)。私は30分電車に乗るため、往復1時間、最近は主にGraal関連の論文を読んでいます。これも専門知識と英語の強化になり、一石二鳥ですね。
オンライン英会話は?
Native Campをやっていました。ここ数ヶ月中断しています。普段まったく英語で会話する機会がない場合は、積極的に活用する方がよいですね。発音を聴いてもらって修正したり、フレーズを学んだり、とにかく話すことに慣れたり、さまざまなことに使えます。
私には各オンライン英会話の良し悪しはわかりません。あまり調べることに時間をかけすぎずに、まずはメジャーどころでやり始める方がよいと思います。
ブーストする: フィリピン社会人語学留学
日本で発音や短いフレーズなどまずまず積み重ねができれば、フィリピンに語学留学してブーストする手もあります。私も自費、有給で1週間行きました。費用など詳細はこちらのエントリで。
フィリピンは"フィリピン語と英語による二言語併用教育政策"もあり学校は英語だそうです。多くのオンライン英会話もフィリピンの先生ですよね。ある程度の積み重ねのあとでは、1週間でも費用対効果としてよかったと感じています。自分の中では語学学習だけでなく有意義な時間を過ごせました。
登壇する場合の準備は?
とにかく実際にプレゼンテーションを何度も練習することです。とくに英語だと、ある程度意味は伝えられても、そういう言い回しはしない、ということがあります。英語ネイティブや外資系での勤務経験がある人に、できれば何度も聴いてもらうのがよいです。
同時に、必ず録画をして自分でも見返しましょう。これは英語登壇に限らず有効です。スマートフォンでの録画で十分です。
まとめ
絶対量として、英語に触れる時間を増やすというのが鉄則だと思います。私も社会人で子どもが3人、ましてや一番下の子が0歳ですので、家で、あるいは休日に学習する時間は確保できません。他の多くの英語学習者の方が書いておられるように、いかに日々のスキマ時間に学ぶかが鍵となります。
ソフトウェアエンジニアの、海外カンファレンスとの関わりという観点から今回英語学習をまとめてみました。ただ、一番大事なことは英語ができてから海外カンファレンスに行こう、ではなくまずは海外カンファレンスに参加してみて、自分にとっての英語の意味を見出すことだと思います。