前回はJCPそのものについて解説しました。
今回はみなさん自身がJCPメンバーになるメリットやメンバーの種類、具体的な手順を解説します。
個人でJCPメンバーになって何がいいのか
JCPメンバーには企業や非営利団体、JUGだけでなく個人もメンバーになることができるのでした。個人、という観点でJCPメンバーになるメリットは何でしょうか?JCP PMOのスライドには以下のようなことが書いています。
- 知識を得る
- スキルアップできる
- Visibility(可視度)を上げる
- 認知度を上げる
- オルトルイズム
- Fun(楽しさ)
- 友人を作る
ここで聞き慣れない言葉があります。"オルトルイズム"です。辞書翻訳するとaltruism=利他主義とあります。日本人である僕やみなさんの多くにはわかりづらい概念です。自分がそこからさまざまなものを得たのなら、そこに対して還元していくよ、というものです。
脱線して個人的意見
諸外国では、サービスであれば、とにかくできる限り安くではなくサービスに対する正当な対価を払う、無償で使えるものなら、何らかのことで貢献する、という文化的側面があると理解しています。私たち日本は(日本人は、日本企業は)どうでしょうか?無償であれば使い倒せばいいのでしょうか。無償であることは当然のことなのでしょうか。JCPやOSSへの貢献には言語の壁の影響も非常に大きいと考えますが、いつもいつも使う側にだけいるという姿勢には(私自身に対しても)疑問があります。
私たちJavaエンジニアは、Javaを使うことで給与を得ています。いやいや、Javaがなくなっても無償の他言語を使えばいいじゃない、搾り取るだけ搾ったら捨てて他に行く、だから関係ない、でよいでしょうか。
僕は貢献したい、していきます。すごいことはできません。この投稿も小さいながらその1つです。もちろん単純に利他主義だけではなく、VisibilityやFunの部分もあります。
JCPメンバーになったらできること
JCPメンバーでなくともJavaの仕様策定に関わることはできますが、メンバーになることでより関わりやすくなります。Contributorとして名前を載せたり、ECメンバーの選挙で投票するといったこともできます。
JCPへの参加形態
JCPの会員ステータスは次の5つに分けることができます。
- オブザーバー
- 登録ユーザ
- アソシエイトメンバー
- パートナーメンバー
- フルメンバー
オブザーバーはJCPにユーザ登録していない人です。登録ユーザは、JCPにユーザ登録しているけれど、メンバーにはなっていない人です。
JCPのユーザ登録
ユーザ登録はjcp.orgでできます。サイトにアクセスして、Register for Siteのリンクから進めます。
オラクルのSSOを使用しているので、オラクルのアカウントが必要です。OTNを利用する時に使うアカウントですので、ほとんどの方がアカウントを持っていると思います。
メンバーの種類の違い
JCP会員ステータス5つのうち、メンバーは次の3つだけです。
- アソシエイトメンバー
- パートナーメンバー
- フルメンバー
単純に言うと次のように分けられます。
種類 | 対象 |
---|---|
アソシエイトメンバー | 個人 |
パートナーメンバー | JUGや非営利団体など法人以外。 |
フルメンバー | 法人と個人でExpert Groupもしくはスペックリード(次回以降説明)となる人。 |
どのメンバーシップでも費用はかかりません。個人であれば基本的にアソシエイトです。個人でフルになる場合のみ、Employer Contribution Agreement(ECA)といって雇用者に署名をもらう必要があります。アソシエイトでもJavaの仕様策定にContributorとして参加できます。
個人、法人、JUGなどでどのメンバーシップを選択すればよいか、公式サイトにフローチャートがありますので、画像を置きますが最新の情報はリンク先を参照ください。
The Java Community Process(SM) Program - Participation - Overview:Getting Involved
なお、私が代表を務めている関西Javaエンジニアの会も、パートナーメンバーとして参加しています。
アソシエイトメンバーになる手順
関ジャバによく来ていただいているid:tomoTakaさんが実際にアソシエイトメンバーとなったときの手順をまとめてくださっています。こちらのとおりに進めれば問題なしです!
雑感
以前に比べると、JCPメンバーとなる手順は非常に簡単になりました。JCPのメンバーシップもJavaの仕様と同じ手順で策定、改訂されています(JSR-364)。電子署名で済みます。僕がやったときは文書を印刷してサイン、それを国際FAXでアメリカに送信(1枚100円で10枚以上、間違えると再送信)でした。
JUGメンバーとしてパートナーメンバーになる
JJUGや関ジャバを通じて、パートナーメンバーとなることもできます。ただ、Javaの仕様に貢献するときはやはりアソシエイトかフルメンバーになる必要があります。こちらの手順もtomoTakaさんがまとめてくださっています。
メンバー間でのできることの違い
公式サイトに記載がありますので、翻訳したものを掲載しますが、最新の情報はリンク先を参照ください。
項目 | オブザーバー | 登録ユーザ | アソシエイトメンバー | パートナーメンバー | フルメンバー |
---|---|---|---|---|---|
JSRのレビュー | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes |
ドラフト仕様のレビュー | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes |
Expert Groupの資料閲覧 (JCP 2.8上記JSR) | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes |
Expert GroupとContributorの候補者の閲覧 | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes |
JSRの提案に対してサポーターとして名前が掲載される | Yes | Yes | Yes | Yes | Yes |
JSRのウォッチリストを作成する | Yes | Yes | Yes | Yes | |
Contributorに推薦される | Yes | Yes | Yes | Yes | |
Expert Groupに推薦される | Yes | Yes | Yes | Yes | |
新しいJSRを提案する | Yes | Yes | Yes | Yes | |
JCPメンバーイベントに参加する | Yes | Yes | Yes | ||
JSRにContributorとして作業する | Yes | Yes | |||
Executive Committee選挙でアソシエイト席の投票をする | Yes | ||||
Executive Committee選挙で批准席の投票をする | Yes | Yes | |||
Executive Committee選挙で選抜席の投票をする | Yes | Yes | |||
Executive Committeeで作業する | Yes | Yes | |||
コミュニティドラフトをレビューする (JCP 2.1) | Yes | ||||
Expert Groupsで作業する | Yes | ||||
JSRのリーダとなる | Yes |
The Java Community Process(SM) Program - Participation - Overview:Getting Involved
JCPイベント
メンバーになるとJCPのメンバーイベントに参加できます。たとえば、毎年JavaOne期間中にJCP Party & Awards Ceremonyがあります。僕も参加しています。
ここで、JCP Member/Participant of the Yearの授賞式があり、受賞者はガラスの盾がもらえます。また、メンバー有志のバンドNull Pointersの演奏があります。
次回は
Javaの各仕様の提案であるJSRについてご紹介します。